草々不一

長文で書きたくなったことを保存します。誰かに届きますように。

想いは日々変わる

 三週間に渡る長きテスト週間がやっと終わった。四則演算とアルファベット、ギリシア文字で築かれた知識が脳に入っては消え、慎重に掬い上げて零れ落ちないように運び答案用紙に垂れ流す、そんな日々だった。

 

 

 寒さでペンを握る手は言うことを聞かない。今までどうやって冬を越してきたか不思議でならない。夏に「暑いの嫌いだから冬のほうが好き」とか言ってた自分をぶん殴ってやりたい。そう思いながら机に向かっていた。八畳の部屋の壁からは楽しそうな会話が聞こえてくる。他学科は予定表に書かれたテスト週間でテストが終わっているのかもしれない。週間というものは本来1週間のことを指すはずだ。真っ黒なコーヒーの水面に漂う湯気だけが自分の味方かと感じた。理解はしていた、計画的に勉強していれば良かったのだと。それでも目の前の壁に羨望の眼差しを向け、予定の書かれたカレンダーを睨んでしまうのは仕方のないことだろう。

 

 ふと、話題のゲームを思い浮かべる。最近発売した大人気の格闘ゲームだ。楽しそうだと思う反面、他人事のようにも感じていた。きっと自分はテストが終わっても友達の家に集まるのではなく、一人硝煙と暴言が蔓延する世界で銃を握りしめて走っているのだろう。自分がテストでも周りは普段通りの生活を送っているように、己のゲームスタイルというものは話題のゲームくらいでやすやすと変わるものではない。

 

  一通り勉強を終わらせ、公式を暗唱しながら眠りにつく。できるだけ長く留めておけますようにと。できるだけ定着しますようにと。明日の今頃は解放感に包まれながら寝ていることだろう。早く寝たいという気持ちと寝たらこの公式を忘れてしまいそうだという憂いに揺れていたが、布団に入ったのだから一思いに寝ようと目を閉じるのだった。

 

 

 テストはあまりに呆気なく終わった。周りの安堵した表情を見るまで実感が沸かないくらいだった。そうして日常に戻る。しかし日常に戻ったはずなのにものすごい焦燥感に駆られていた。自分にはやらなければならないことがあると感じた。テストに意識を持っていかれていつもの提出物を出し忘れるなんてほんの些細なことだった。そのあとの授業は耳に入らなかった。

 

 授業後、僕はスマブラを買ったという友達に予定が空いてないか確認するのだった。