草々不一

長文で書きたくなったことを保存します。誰かに届きますように。

二度あることは…

 トイレの蓋を開き、長い夜になると僕は悟った。水位はただ増え続け、流れることをしなかった。つまるところ、というかトイレが詰まっていた。

 

 それは課題を提出し終えた21:40の話だった。後は飯食べて寝るだけだと思い、晴れ晴れとして向かったトイレは、まるでパンドラの箱のように絶望を振りまいていた。夏休みが終わる前に掃除をしたはずだが、確かに最近急に寒くなったことでトイレを使う機会が増えた気がすると、あまり意味のない原因究明を終え、今後の対策について考え始めた。昨日のごみ回収で「水回りはお任せ!」と書いてあるマグネットを冷蔵庫からはがし捨てたことをこんなにもすぐ後悔することになるとは、と感動すらした。

 

 しかしこの状況に対して僕にはそれなりのアドバンテージがあった。というのもこの光景を見るのは今回が初めてではなく、実家で対峙したことがあったのだ。「ラバーカップ」というものをご存じだろうか。名前自体になじみがなくても目にしたことはあると思う。学校のトイレにある「スッポン」などと呼ばれる、先端に半球型のゴムがついた棒のことだ。これが実は優秀で、トイレが詰まってもラバーカップさえあればすぐに直せてしまう。問題はそれを売っているホームセンターがどんなに良く見積もってもどこも閉まっているであろう時間だということだけだった。

 

 それでも諦めきれない僕は24時まで開いているスーパーに向かった。正直ラバーカップなんてスーパーで買われないものランキングでTOP10に入りそうなものが売っているとは思わなかったので、秋になって出回っているスナック菓子「おさつどきっ」(おいしいのでぜひ)でも買って落ち着こうと思っていた。しかし予想に反してラバーカップは売っていた。今日ほどこのスーパーが頼もしいと感じる日は後にも先にもないだろう。レジにこれだけ出すのはなんとなく恥ずかしかったので他にヨーグルトと、もちろん「おさつどきっ」を握りしめ会計を済ませた。

 

 家に戻り、早速詰まりを直し始める。5分も経たずに詰まりは解消されひと段落つくことができた。せっかくだから掃除をすることにした。トイレットペーパーと洗剤を使ってトイレを拭き、周りをウェットティッシュクイックルワイパーで掃除した。一通りやって満足したのでシャワーを浴びることにした。風呂から出て「寒くなってきたし腹の調子も気をつけないとな」とヨーグルトを食べながらしみじみと思った。

 

 ウェットティッシュクイックルワイパー、これらをどこに捨てたか。これを思い知るのはもう一度トイレの蓋を開けた後だった。