草々不一

長文で書きたくなったことを保存します。誰かに届きますように。

観戦者から観るesports

 ユーキャンの新語・流行語大賞のノミネート語に並ぶほどの知名度となった「esports」であるが、黎明期である今多くの物議を醸している。ここではesportsに魅了された筆者が観戦する側としてどのような思いをもって現在の状況を考えているのか、そしてesportsという存在を知ってはいるけれどよくわからないという方の認識を少しでも広げられ、そして楽しめるようになってほしいという視点で書いていこうと思う。

esportsとは

 そもそもesportsと言われるゲームと通常のゲームは何が違うのかというところに触れたい。Wikipediaでは「エレクトロニック・スポーツ(英: electronic sports)は、複数のプレイヤーで対戦されるコンピュータゲーム(ビデオゲーム)をスポーツ・競技として捉える際の名称である」と書かれている。これを参考にして、本文では本来の定義としては違うかもしれないが「戦う相手が人間か否か」という点で分類したいと思う(ぷよぷよやPUBGなどを対人ゲームと考える。ファイナルファンタジードラゴンクエストといったRPG太鼓の達人などの音ゲー、その他のスコアを競うものは対人でないと考えていきたい。)。

なぜ「スポーツ」なのか

なぜ対人ゲームはesportsと呼ばれるのか。これはプレイヤーが敵味方にわかれ競い合う、試合(game)を行うことからだと考えられる。そしてプレイヤーはそのゲームで一番強くなりたいと切磋琢磨しあう。こうして実力を上げていくのもスポーツと言えるかもしれない。また、自分は以前「反射神経や動体視力、戦術や一瞬の判断を行うからスポーツだ」と考えていた。しかし今はこれらの考えのほかに重要だと考えているものがある。それは「観ていて心躍るものである」ということだ。つまりプレイするゲームとそのプレイヤーだけでなく、それを視聴する人が必要不可欠だと考えるのである。

「スポーツ」であることにこだわる必要はない

そもそも「esports」という名前が問題をややこしくしている。「スポーツ」を名乗っていることで「ゲームはゲームじゃないか、体も動かしていないものをスポーツとは言わない」と反論されてしまう。そしてそんな意見に対して様々な理由をつけて「esportsはスポーツだ」と主張する。しかしesportsの本質は「スポーツであること」ではない。重要なのは人々を魅了するプレイを提供する側がいて、その映像に需要があるということだ。今esportsが盛り上がっている背景はそこにある。

esportsの需要

YouTubeを始めとする動画投稿サイトによって、従来の「ゲームは隣でプレイしているのを見ているだけではつまらない」という考えが変わりつつある。様々なゲームを様々な人がプレイし、その違いを動画という形で多くの人が楽しむことができる。そしてその中で「esports」と呼ばれるゲームはプレイヤーによる差が顕著に現れる。RPG系のゲームは基本的にどのプレイヤーも同じ様にストーリーを進めていく。その中でプレイヤーごとの反応や進め方が違うこともあるが、一度ストーリーを知ってしまえば初見よりも興味は薄れていくであろう。しかしesportsはストーリーを知っているから関心がなくなった、ということがない。技術、戦略、知識といったプレイヤーに大きく依存したプレイを見ることができる。そして上手いプレイや面白いプレイを観ると魅了される。こうしてよりゲームが上手い、また理解度の高いプレイを観てみたいという需要が生まれるのだ。
いうなればesportsシーンはオーケストラやマジックに近い。楽器やトランプではなく、ゲームで人々を魅了するものなのである。

esportsは身近過ぎる

 例えば将棋であれば、娯楽でやっている人もいるがプロの棋士がいることに違和感はない。しかしゲームは人々に娯楽だという強い印象を与えている。これによってスポーツだとかプロだとかいうのが「所詮ゲームだろ」という意見を持たせてしまっている。それを「いや、esportsは遊びじゃないんだ」と否定してしまうのはナンセンスである。それはプレイする側の意見だからだ。esportsにはプレイヤーがいることは当然だが、プレイヤーに対して観客の数のほうが圧倒的に多い。つまり大多数の人にとってゲームはプレイするものだが、esportsは観戦するものなのだ。そしてesportsを観戦することは「娯楽」である。プロだとかスポーツだとかいう前にまず娯楽としてesportsを楽しむことが重要である。

esportsの楽しみ方

 だからesportsに偏見がある人にも、一度動画を観てほしい。動画サイトには、世界には自分が楽しくやっていたゲームを信じられないくらい本気でやっている人たちがいる。ポケモンはその確たる例だ。子供のころ何気なくやっていたゲームはネットの発展によって世界中の人と対戦ができるようになり、今すさまじい量の研究、戦略開発が進んでいる。我々はその成果を観戦することができる。もしそのプレイを観て楽しいと思えれば考えは変わってくると思う。プレイヤーではなく観客としてゲームを楽しめること、これがesportsの良さなのである。